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2013/03/31

あきる野学園保護者の皆さま

F20130321

2013年3月21日

保護者の皆さま

お子様のご卒業、おめでとうございます

 本日お子様がご卒業を迎えられたことに、心からお祝いを申し上げます。
 皆さまの中にはお子様の命の危険にご心労を重ねてこられた方もいらっしゃると思います。そうしたことを経て成長されたお子様の姿には、とりわけ感慨ひとしおのことと存じます。

 さて、卒業式には「日の丸」が掲揚され、式の初めには「国歌斉唱」が行われます。それは当然のこと、と思われる方は多くいらっしゃるかと思います。
 東京都教育委員会は2003年10月に「入学式、卒業式等における国旗掲揚及び国歌斉唱の実施について(通達)」を出し、「『君が代』斉唱時に起立せよ」との職務命令を校長に出させ、起立をしない教員を処分することを始めました。この9年間で、東京の教員延べ441人が処分をされました。
 私は2年前にここ、あきる野学園を退職するまで、「君が代」斉唱の際、起立をしなかったことにより2004年度から毎年処分をされ、2007年度からは停職6か月処分を受けました。昨年まであきる野学園に在職した田中聡史さんも、この2年間、ずっと処分を受け続けています。19日に行われた転勤先の板橋特別支援学校の卒業式でも起立はしませんでしたから、また処分をされるでしょう。
 東京、そして昨年からの大阪の、このような処分は、全国的に見れば突出しています。世界的に見ても、近代・民主主義国家でその例はありません。

 では、《なぜ、私は起立の職務命令に従わなかったのか》を述べます。
 「日の丸・君が代」は戦前・戦中の学校教育で戦意高揚のために使われ、「お国のために命をささげる」子どもをつくってしまいました。
 戦後の教育はその反省から出発し、「日の丸」掲揚は文部省が禁止し、また「君が代」は禁止とはなりませんでしたが、ほとんどの学校で斉唱を止めました。教員たちも、国の命令に黙って従ってきたことを反省し、日常の教育活動も卒業式をはじめとする学校行事も、子どもたちの意見を聞き、各学校の職員会議で丁寧に論議し決定して行ってきました。
 しかし、国は教育の柱に「愛国心」、「日の丸・君が代」を置くように徐々に変わっていきました。東京では上記通達をもって、「卒業式の主催者は東京都教育委員会」だとして、「国旗に正対し、国歌を起立して斉唱する」ことを卒業式の最大の狙いとし、職務命令と処分を使い始めました。式に厳粛さを求め、子どもたちの卒業制作を飾り、気持ちを表現するなどの、それまで行ってきた温かな式を禁止しました。
 子どもよりも国旗国歌が主人公になったような卒業式には違和感を禁じえませんでした。

 私は、「日の丸・君が代」の歴史や意味を教えずに、国旗国歌の尊重を、体を通して教え込むことは、教育に反する行為であり、戦前・戦中の誤った教育の轍を踏むことだと考えます。「日の丸・君が」をめぐっては、国民の間で意見が分かれます。そうした問題について学校教育が、「国旗国歌を尊重せよ」と一方の価値観を教え込むことは、してはならないことだと思います。

 都教育委員会は、「起立する教員と起立しない教員がいると、児童・生徒は起立をしなくてもいいものだと受け取ってしまう」。だから起立しない教員を処分するのだと言います。処分で脅し、全教員が起立すれば、それを見る子どもたちは、「君が代」では起立・斉唱するものだ、国旗国歌は尊重するものだと受け取るでしょう。指示には考えずに従うものだと、身体が覚えるでしょう。
 このようにして再び、「戦前・戦中の子ども」をつくることに加担してはいけないと私は思ってきました。

 人々がいろいろな考え方・価値観を持つことを日本国憲法は保障しています。子どもたちにも当然保障しています。私は子どもたちにそのことを折に触れ、伝えたいと思ってきました。よく考えて間違いだと思うことには手を貸さない。反対の意思を表明する。正しいと思うことには一人でも行動する。人と違っていいのだということを自身の日常の行動で伝えたいと思い、子どもたちと接してきました。
 子どもたちには指示に従順になるのではなく、自分の頭でよく考え、自分の考え(思いや要求)を主張できる人になってほしいと思います。このことは、人が生きる上で大事なことだと私は思うのです。競争に勝てないのは自己責任、という風潮が強くなり、福祉が切り捨てられる一方の今、私はいっそうこのように思います。
 ですから、私は処分をされても、間違っていると思う職務命令には従わなかったのです。

 私は本日卒業する高等部の生徒たちを授業で担当したので、生徒たちとの思い出がたくさんあります。卒業式に参列しお祝いしたいと思い、申し出たところ、校長は「旧職員は招待していない」と言い、どんなにお願いをしても、私の出席を認めてはくれませんでした。
 卒業を祝うことよりも、「君が代」起立こそが大事。この校長の対応に情けなく、また、とても悲しい気持ちです。
 保護者の皆さま、「ご卒業、おめでとうございます。自分の気持ちを大事にし、誇りを持って生きていってください」と、どうぞお子様にお伝えください。
 また、田中聡史さんから、卒業生の皆さんに「ご卒業おめでとうございます」と伝えてほしいと依頼を受けましたので、お伝えします。

最後に、皆様のご多幸を心よりお祈りいたします。

根津公子(2008~2010年度あきる野学園に在職し、定年退職)

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