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2019年4月

2019/04/25

都庁前通信 2019年4月25日号

F20190425

 

生徒や教員を励まし救うと本気で考えているのか?
都教委の「東京都教育委員会から生徒と教員へのメッセージ」

 4月11日に行われた都教委定例会では、議案「東京都教育委員会から生徒と教員へのメッセージについて」が出席した全教育委員の賛成で承認された(1名欠)。メッセージを出す目的は、生徒に対しては「学校生活を送る上で生じる様々な感情と上手に付き合うことの大切さを伝えるとともに、悩んだときには身近な大人に相談するよう促す」、教員に対しては「日頃の教育活動に感謝して激励するとともに、課題の解決に向けた取組をともに行っていくことを伝える」のだという。
 しかし、都教委の言はきれいごとでしかない。実際に東京の公立学校で起きたいじめによる自死について、都教委定例会で論議したことはなく、遺族に寄り添わない。一例を挙げれば、小山台高校生の自死では、その生徒が学校側にいじめを訴えても学校側はそれを無視し、自死後に遺族が真相究明を訴えても、都教委が開示した文書は墨塗りであり、「いじめはない」とした。遺族は知事部局に再調査を求める一方、提訴している。

 さて、「メッセージ」は次のようにいう。

◆生徒の皆さんへ
○新学期が始まりました。皆さんは、今、学校生活を楽しんでいますか。保護者の方や学校の先生たちは、皆さんが楽しく充実した学校生活を送ってほしいと願っています。
○充実した学校生活を送るためには、友人や先生などと心を通わせて、良好な人間関係を普段から築くとともに、学校の集団生活における決まりや社会のルールを守ることが大切です。
○しかし、学校生活を送る上で、困ったことや納得できないことが起きた時などは、不安や不満、怒りなどの感情が湧くことがあるかもしれません。皆さんにとって、こうした感情と上手に付き合っていくことも重要です。
○そして、自分たちだけでは解決できないと思った時には、まず、保護者の方や先生など身近な大人に相談してみましょう。もし、大人への相談が難しいと感じたら、東京都教育相談センターなどの相談機関を利用することができます。また、LINEで気軽に相談できる「相談ホットLINE@東京」という方法もあります。これらの相談窓口は皆さんを全力でサポートしてくれます。
○(SNSの危険性を正しく理解して使うこと:省略)
○皆さんが夢と希望を胸に、未来に向かって羽ばたいていけるよう、保護者の方や学校の先生、地域の皆さんと一緒に、東京都教育委員会は心から応援しています。

平成31年4月11日 東京都教育委員会

◆子供たちの健やかな成長を願って ~教員の皆さんへ~
○先生方におかれましては、全ての児童・生徒が充実した学校生活を送れるよう、日頃からご尽力いただき、ありがとうございます。
○さて、児童・生徒への指導に当たっては、日頃から個別の言葉掛けなどにより一人一人の理解を深め、教員としての信頼に基づく良好な人間関係を構築することが大変重要です。
○そして、学校の集団生活における決まりや、社会のルールを守る意味などについて、児童・生徒が十分に理解し、日常の行動として実践できるよう、丁寧かつ継続的に指導していくことが必要です。
○また、児童・生徒への指導や外部への対応に苦慮するケースもあることから、担当教員を孤立させないよう、学校は複数の教員が協力して指導に当たることを基本とした校内体制をしっかり定着させる必要があります。こうした組織的な取組を通じて、体罰を絶対に許さない学校風土を一層強固なものにすることにも努めていただきたいと思います。
○東京都教育委員会は、教員の皆さんがやりがいをもって日々の仕事ができるよう、今後も学校訪問等を通して皆さんの仕事の実情や日々の努力を理解、共有するとともに、皆さんが抱えている様々な課題や悩みなどの解決に向けた具体的な取組を全力で行っていきます。

平成31年4月11日 東京都教育委員会


 「生徒の皆さんへ」では、決まりやルールを守ること、納得できないことがあっても自分の感情をコントロールすることが大事と説く。それは、決まりやルールを論議し見直すことが必要となっても、それにブレーキをかけることになりはしないか。一人が皆と異なる捉え方や判断をし、納得できないことが起きたなら、皆で話し合いをすることこそが、よりよい社会を作っていくうえで大事であり、学校教育はそれを学ぶ場であるはずだ。それを否定するメッセージは、「規律と秩序維持」を最優先する、都教委の考える道徳心を刷り込むものだ。
 「教員の皆さんへ」では、都教委が取り組むべき教員の過重労働軽減については触れないまま、教員が子どもと自由に過ごす時間的保証をしないままに、「児童・生徒への指導に当たっては…」と説く。また、職員会議での発言を禁止し、職務職階級制賃金及び人事考課制度で教員を競わせ、それまで行われてきた協働を奪っておきながら、「複数の教員が協力して」と説く。
 教員が子どもと自由に過ごす時間があれば、教員はいじめに気づくし、相談にも乗れることが、都教委及び教育委員にはわからないのか。まず必要なのは、教員たちが論議し学び合える場である職員会議を復活させることだ(2004年から都教委は職員会議を校長の伝達機関とし、教員の発言を禁止している)。
 生徒も教員も指示に従わされるのではなく、自分の頭で考え判断する自由を保障されれば、自尊感情を高め、道を切り拓くものだ。そして、それこそが、都教委のすべきことである。
自己反省を欠いた都教委の「やっていますよ」をアピールするがための「メッセージ」には、怒りを通り越して悲しくなる。

「原発」触れぬ「復興五輪」――高校生向け副教材に福島県から原発事故の記述を提案される

 都は「2020年。東京と東北で会いましょう。」と題する冊子をつくり、17年度から都立高校生に配って副教材とし来た。冊子は、最初に五輪招致活動の経過を紹介し、次に「被災地の復興は、まだ途上」として、18年1月時点で75000人が避難生活を送っていることや、福島産米や観光客数が震災前の水準に回復していないことをデータで示す。しかし、復興を難しくしている最大の原因である原発事故には触れていない。これに対し、福島県が原発事故の記述を加えるよう都に提案したという(3月24日付東京新聞から)。
 原発事故で故郷を追われた人たちの暮らしや健康、事故の深刻さなどについて、この 4 月に配られる(た?)新版にはどのように記載されたかは、次号以降で触れたい。

 文科省が事故後つくり、再改定して今年度からは全国の学校に配った(昨年度までは希望校に)「放射線副読本」(小学校用 中学・高校用)も「放射線による健康影響があるとは考えにくい」などと記述し、原発事故の深刻さを伝えない。
 都も国も学校教育を使って嘘を教え込んでいる。

通信へのリンク

 

2019/04/11

都庁前通信 2019年4月11日号

F20190411

 

 今回は3月28日に行われた都教委定例会の公開4議題のうちの2議題について報告します。

パブリックコメント募集は形だけ?

「東京都教育ビジョン(第4次)」の策定について

 「ビジョン」は1月31日の定例会で骨子を報告し、その日から30日間にわたり受け付けたパブリックコメントを踏まえて、有識者や校長等による検討委員会で協議し策定したとのこと。それが今日の定例会で承認された。「すべての児童・生徒に確かな学力を育む教育」「社会の持続的な発展を牽引する力を伸ばす教育」など12の方針と30の「今後5か年の施策展開の方向性」を挙げる。
 しかし、資料として配られた、パブリックコメントに対する「都教委の考え方」を見ると、パブリックコメントを「ビジョン」に取り入れた形跡はなかった。やはり、パブリックコメントの募集は形だけであったのか。沢山あるが、そのうちの一つを挙げよう。
「2 社会の持続的な発展を牽引する力を伸ばす教育」の「④ 科学的に探究する力を伸ばす理数教育を推進します。」に対して寄せられたパブリックコメントは、「理数系ばかりでなく、人文・社会系、芸術系、スポーツ系など、子供たちの興味・関心に応じたきめ細かな教育が進められるよう、人員の配置等、教育環境の整備を行うことが重要である。」と。 
 このパブリックコメントに対し都教委は「都教委の考え方」として、「社会の持続的発展を牽引する力を伸ばす教育について『基本的な方針2』に位置付け、理数教育、農業や工業、商業などの職業教育、高度に情報化した社会で活躍できる力を伸ばす教育などを推進していくことで、これからの東京・日本の発展を支え、様々な産業を牽引できる人材を育成していきます。」と書く。これでは都教委の一方的な考えを言うだけで、パブリックコメントへの回答にも協議の材料にもなっていない。

 このパブリックコメントを出した人の頭には、次のような懸念があったのではないかと推測する。兵力不足となった1943年、「在学徴集延期臨時特例」を公布し、理系と教員養成系を除く文系の高等教育諸学校の学生の徴兵延期措置を撤廃し、戦場に向かわせた歴史的事実。そしてまた、文科省が2015年6月、国立大に対し、人文社会科学部・教員養成系学部について「国立大学としての役割等を踏まえた組織見直し計画を策定し、組織の廃止や社会的要請の高い分野への転換に積極的に取り組むよう」通知したこと。この2つを考え合わせ、国家による国立大学への支配・介入や「国の求める人材づくり」の先にあるものを懸念したのではないだろうか。文科省のこの通知に対しては、国立大学法人17大学人文系学部長会議等、数団体から抗議声明が出されている。

 2月に策定された「都立高校改革推進計画・新実施計画(第二次)」も、パブリックコメントが最も多く寄せられた「立川高校夜間定時制の閉課程(閉校)をやめて」を検討した形跡がないまま、閉課程の方針を打ち出したものだった。機能させようとしない都教委のパブリックコメント制度について、発言する教育委員はいないのか。


都教委がまずすべきは、足立区中学の生徒や教職員への謝罪ではないのか

教師用指導書「性教育の手引」の改定について

 「手引き」は「情報化の中、児童・生徒を取り巻く環境の変化、若年層の性感染症やインターネットを介した性被害の増加、前回の改定から10年以上が経過したことから改定した」とのこと。「手引き」が、「性同一性障害等に関する正しい理解」や「学習指導要領に示されていない内容の授業での指導」「産婦人科医等による授業の実施」等の今日的課題を取り入れたことは評価したい。産婦人科医等によるモデル授業を18年度は5校で行ったが、19年度は10校にするという。昨年3月に足立区中学校が行った性教育に端を発して、同年8月に都教委が全中学校長に対して行った調査において、校長の約半数が学習指導要領を超える性教育を求め、また、医師等の外部講師を派遣してほしいとの要望が多かったことによるのは確かだ。
 しかし、「学習指導要領を超える内容を指導する場合には、事前に学習指導案を保護者に説明し、保護者の理解・了解を得た生徒を対象に行う」(昨年 4 月 26 日発表)ことを、都教委は頑なに変えなかった。授業は全員を対象に行うから意味があるのであり、「寝た子を起こすな」式の意識を持つ保護者にこそ理解してもらうことが大事なのに、それはしない。非常に疑問だ。“隠し事”を興味ある一部の子どもにだけにおしえるような形の授業は、かえって子どもたちに性への歪んだ関心を引き起こすのではないか。
 今年度モデル授業を実施した学校では、事前に保護者に授業内容を示したうえで、学習指導要領内と指導要領外の授業のどちらがいいかを訊き、2本立ての授業を実施したという。モデル授業では『性交』『避妊』を扱ってもいいという。

 昨年3月16日の都議会文教委員会で古賀自民党議員が足立区中学校の性教育について「不適切」と批判し、中井教育長は、同授業に「課題がある」として、当該校の管理職および全教員を指導する、都内全公立中学校長を指導する旨の答弁をした。さらに都教委は、4月26日の都教委定例会で、学習指導要領を超えた性教育について次のような「見解と今後の対応」を発表した。
 「『性交』『避妊』『人工中絶』といった中学校学習指導要領保健体育にないことばを使った授業は不適切。保護者の理解を必ずしも十分得ないまま授業が実施されていた。」今後は、「学習指導要領を基本とする。すべてを集団指導で教えるのではなく、集団指導で教えるべき内容と個別指導で教えるべき内容を明確にする。学習指導要領を超える内容を指導する場合には、事前に学習指導案を保護者に説明し、保護者の理解・了解を得た生徒を対象に個別指導を実施するなど」とした。
 こうした経緯があるから、都教委は自身及び古賀議員の面子を保つために「保護者の理解・了解」にこだわるのだろうか。
 子どもたちの実態を踏まえて出された、校長たちからの要望等を受け止めて都教委は「手引き」の内容を変えたのだから、「中学校学習指導要領保健体育にないことばを使った授業」も必要と認識したということだ。ならば、まずは足立区中学校の当時の生徒や保護者、教職員に誠実に向き合い謝罪すべきではないのか。都教委はこの人たちの人権を侵害したのだから。そのうえで、昨年4月26日に発表した「見解と今後の対応」を見直すべきではないのか。
 「保護者の理解・了解を得る」ことを条件にしたことについて、校長や教職員が賛成するはずはないと思うのだが、そうした声は都教委に届いていないのだろうか。子どもも親も混乱し、教職員の不要な仕事量は増えるばかりだ。また、こうした条件を付けることで、教員はむしろ性教育をやりにくくなるのではと、気がかりだ。
 「保護者の理解・了解」というならば、都教委は「愛国心」を刷り込むオリンピック・パラリンピック教育や卒業式・入学式での「日の丸・君が代」の強制にこそ、適用すべきである。

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